SDGs(持続的な開発目標)を「じぶんごと」としてわかりやすくかみ砕く

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「SDGs(読み方:エスディージーズ)」と言う言葉を私が初めて聞いたのは、お恥ずかしながら2018年度後半でした。
当時は「マイクロプラスチック問題」で、海の生態系を脅かすことへの対応が喫緊で必要、「紙ストロー」が普及し始めました。
この対応の早さは、「2025年までに、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」というSDGsの目標に掲げられていたことが大きく、日本のみならず196ヶ国の共通の取り組みになっています。
今回、日本、世界、そして地球の「未来予見」とSDGsそのものを身近な「じぶんごと」として捉えようと思い、この本を手に取ってみました。
本音で「購入して良かった」書籍、ご紹介します。
以下に該当する方は、ぜひ手にとってお読み頂けますと幸いです。

 ・SDGsの基本を押さえたい方
 ・SDGsを「じぶんごと」と捉えたい方
 ・未来を予見したい方
 ・子供の将来をよくしたい方
 ・生活を豊かにしたい方
 ・顧客のビジネス課題を社会課題の観点から解決したい方

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書籍プロファイル

タイトル:2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望
著者:落合陽一
出版社:SBクリエイティブ
出版日:2019年11月14日
ページ数:352ページ
読みやすさ:★★★

落合陽一さんのご紹介

筑波大学学長補佐・助教、デジタルネイチャー研究室主宰、Pixie Dust Technologies, Inc. CEO、メディアアーティストなど様々な顔を持つ落合陽一さん。
書籍は、キャッチーなタイトルに加え、事実データや著名人との対談などを盛り込む構成が多く、大変わかりやすく表現してくれます。

書籍の目次

・はじめに──2030年の世界はどこに向かうのか
・第1章 2030年の未来と4つのデジタル・イデオロギー
・落合陽一×安田洋祐対談 [持続可能な経済発展は、そもそも可能か]
・第2章 「貧困」「格差」は解決できるのか?──サードウェーブ・デジタルと、個人の可能性
・落合陽一×池上彰対談(1) [アフリカの貧困地域のために何ができるか]
・第3章 地球と人間の関係が変わる時代の「環境」問題──GAFAMは「環境」と「資本主義」の
 対立を越えるか
・落合陽一×宇留賀敬一対談[エネルギーと地球温暖化について今世界で起こっていること]
・第4章 SDGsとヨーロッパの時代──これからの日本の居場所を考える
・落合陽一×池上彰対談(2) [なぜ、世界の問題は解決できないのか?]

はじめに〜2030年の世界はどこに向かうのか〜

2000年代から「インターネット」の普及によって本格化したグローバリズム。
アメリカは、GAFAM(Google,Amazon,Facebook,Appler,Microsoft)をはじめとする巨大IT企業を生み出し、中国は、約14億人の人口を抱え、急激な経済発展をし、アメリカと世界を二分する国家へと成長しました。
資本主義の発展とともに、「貧富の差」は拡大、開発途上国のみならず先進国に暮らしていても、深刻な貧困に脅かされている人は珍しくありません。

また、猛暑、熱波、豪雨などの「異常気象」が頻発し、特に地球温暖化を食い止めるための二酸化炭素排出量の削減は、国際的に急務となっています。

さらに、技術革新(AIやIoT、自動運転等)が加速し、10年先の未来を想像することが難しくなってきています。

これからの「世界」について考える上で、国際的な枠組みである「SDGs」が重要な鍵となっています。
このSDGsから2030年の世界の向かう先を予測していきます。

そもそもSDGsとは何か

「SDGs」とは、Sustainable Development Goalsの略称であり、日本語訳は「持続可能な開発目標」となります。
今後生活している私たちの要求を満たし、かつ、将来の世代が必要とする資産を損なうことのない社会の事で、その実現のために、
 貧困
 ・環境
 ・労働問題
等の17のゴール
を掲げています。
2010年の国連サミットにおいて全会一致で採択され、2030年の達成を目標としています。

1  貧困をなくそう
2  飢餓をゼロに
3  すべての人に健康と福祉を
4  質の高い教育をみんなに
5  ジェンダー平等を実現しよう
6  安全な水とトイレを世界中に
7  エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8  働きがいも経済成長も
9  産業と技術革新の基盤をつくろう
10 人や国の不平等をなくそう

11 住み続けられるまちづくりを
12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
14 海の豊かさを守ろう
15 陸の豊かさを守ろう
16 平和と公正をすべての人に
17 パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsの17のゴール

SDGsの特徴を、落合陽一さんは以下の様に定義されています。
開発途上国の救済に捉えられがちですが、そうではなく先進国と開発途上国の両方であり、企業も本SDGsの策定に参加しています。

①タスク型の目標設定
 *上記17の目標の下に169のターゲットが併記
②対象は先進国と開発途上国の両方
③グローバル企業が策定に参加

SDGsの特徴

わかった様でわかりにくいSDGs

世界196か国が、2030年までの17の目標と169のターゲットを持ち活動していることは理解できても、17の目標のうち、日本人に身近なテーマがあまりない印象になると思います。
落合陽一さんも同様の解釈をされており、腹落ちの難しさを表現されていました。

①主題となるテーマと各国の問題の結びつきの分かりにくさ
②根本にある持続可能性のわかりにくさ
③問題解決の過程の複雑さ

 *一国の自助努力ではどうにもならない問題

理解が深まらない理由3点

上記3点を踏まえ、問題認識、解決へのアプローチを「じぶんごと」として考え、日々行動することが、世界を良くし、未来の子供へのバトンをつなげていくための一歩を踏み出す必要があると落合陽一さんは仰っています。
例えば、最も「重要な問題」である「貧困」を取り上げて解説します。

アフリカの貧困

貧困の定義は、「必要最低限の生活水準を維持するための所得が得られない状態」となっています。
定量的には、世界銀行では国際貧困ラインとして、「1日1.9ドル未満」と定義しています。
この「1日1.9ドル未満」の生活水準の国は、現時点では「アフリカ諸国」に集中、特にサハラ砂漠以南の国々(スーダン、中央アフリカ、コンゴなど)が対象となっています。

また、上記「国際貧困ライン」以外に、「多次元貧困指数」という指数も登場し、どんな種類の貧困に直面しているのかがわかる様になっています。

教育
 1. 就学年数:就学経験年数が6年以上の世帯員がいない
 2. 子どもの就学:学校に通うべき年齢の子どもが就学していない
健康
 3. 子どもの死:調査日までの過去5年間のうちに子どもが亡くなった世帯
 4. 栄養:栄養不足の成人または子どもがいる
生活水準
 5. 電力:電気の供給を受けていない
 6. 衛生:改善された下水設備がない、または改善された下水設備を他の世帯と共用してる
 7. 安全な飲料水:安全な水が得られない、または安全な水を入手するのに30分以上

   かかる
 8. 床:家の床が泥、砂または糞である
 9. 炊事用燃料:糞、木材または木炭で料理する

 10. 資産:ラジオ、テレビ、電話、自転車、二輪車、冷蔵庫、自動車、トラックのいずれも
      持っていない

多次元貧困指数( SDGsの1・2・3・4・6・7とも強い関係がある)

次に、アフリカの貧困が続く要因を以下の通り捉えます。
特に、巨大な油田を擁する産油国であるため、二次産業三次産業の育成が不要であり、社会契約が成立してこず、国民からの税収に頼る必要がない国だったことが特徴の一つです。
つまり外需に頼りっぱなし、税収に頼る必要もなく、アフリカ国内への効率的な資源分配を行って来なかったということになります。

①西欧諸国に振り回された歴史
 *東西冷戦に伴う紛争
②開発を阻む「資源の呪い」
 *巨大な油田を擁する産油国
③近代的な制度が定着しにくい
 *国と民族が一致していない 帰属意識が低い

アフリカはいつから貧しくなったか

そんなアフリカ諸国ですが、サハラ以南は、人口の70%を30歳未満が占める若者中心の世界、柔軟な知性を持ち合わせています。
アフリカを変えるテクノロジーは、リバースイノベーションの萌芽があります。
きっかけは携帯電話」であり、日本の様に固定電話からの普及ではなく、SIMカードを挿して通信・通話を行うことが当たり前となっています。
結果、「Mペサ」を代表する様な個人間取引の商習慣がテクノロジー起因で創出される国、それがアフリカです。
このテクノロジーから貧困脱却の早期化が見込まれる可能性があり、医療費を積み立てるサービス「Carepay」などがすでに普及し、診療費が払えないといった事態を回避する方向にあります。

日本の貧困

上記「アフリカの貧困」記載の通り、貧困は日本では考えられ辛いものですが、実は、日本にも貧困はあります。

「相対的貧困」という定義があります。
「相対的貧困」とは、「所得の中央値244万円の半分以下」、つまり「年間122万円以下」で生活する方を日本における貧困と定義されています。

全人口に占める割合は15.7%日本は先進国の11.8%と比べ割合が高い状況となっています。

アフリカの様な「絶対的貧困」と異なるのは、生活様式や所持品から判別しにくいところです。
日本は、「シングルマザー」の貧困率が高く、アメリカの35.8%に対し54.6%と高くなっています。
これは、雇用形態に問題があり、「パート」や「非正規社員」の扱いを変化させていく必要があります。

また、「高齢者の貧困」も高く、生活保護受給世帯のうち47.4%が高齢者であり、貧困層に転落すると脱出は困難な状況に直面しています。

貧困への解決策は教育

格差を打ち破る解決策は「教育」となります。
格差をシャッフルすることができれば、

 ・教育の私費負担が多い、年収に左右される
 ・地域格差

などの「個人スキルではないところで進学が途絶える」といったことを減らすことができます。
つまり、テクノロジーを活用し、「MOOC(Massive Open Online Courses)」や「N高」、「スタディサプリ」などをはじめとする「インターネット教育」にて教育格差を打ち破ることが貧困への解決策に成り得ます。スタディサプリは有名になってきましたね。

地球温暖化〜今までの人類が吸ったことがないCO2を吸っている〜

CO2が地球温暖化の原因ということはほぼ確実な事実になっています。
地球温暖化がこのままの状態で続くと、2030〜2052年までに1.5度気温が上昇、2100年までに4度上昇する予測があり、海面上昇と地域的な食糧危機の発生、ならびに多くの種の絶滅となる可能性があります。
日本でも熱帯性の伝染病が蔓延したり、果樹の生産地域が変わるなど生態系が大きく変わる等、現在の自然や文化を維持するのは不可能と言われています。

もはや地球規模のため、一国の力でどうにかなるはずもなく、世界196ヶ国が一体となってCO2削減と向き合っていくことが必要不可欠となっていますが、各国それぞれ置かれた状態が異なるため、大量にCO2を排出しているアメリカや中国が拒否したりと、京都議定書以来、様々な調整・交渉が繰り広げられ、ようやく2015年に196か国整ったという事実があります。

・1997年 京都(COP3)
     不参加:アメリカ、削減の義務がない:中国・インドなど
・2009年 コペンハーゲン(COP15)
・2010年 カンクン(COP16)
     アメリカ・中国が同意
・この間、京都議定書から、カナダ、ロシア、日本が離脱
・2015年 パリ(COP21)
     196か国の合意

環境問題の各国の足並み(主なもの)

世界各国が気候危機との戦いに目覚め、もはや回避ではなく不可避的に発生する被害をどこまで縮小できるかということへ取り組んでいくことになります。

CO2削減への各国の向き合い方は?

ヨーロッパ、アメリカ、日本だけを見ても対応が異なります。

◆ヨーロッパ

 化石燃料ではなく、再生可能エネルギーシフト

◆アメリカ

 ・再生可能エネルギー一辺倒への対抗。
 ・技術力(テクノロジー)の最大限活用。
 ・化石燃料は捨てず、よりクリーンに利用という主張。

◆日本

 ・供給側が再生可能エネルギーの比率を高める。非化石化を推し進める。
 ・需要側では化石燃料の消費量を削減

とにかく化石燃料を使わない方向で再生可能エネルギーに活路を見出そうとするヨーロッパ、それにテクノロジー・イノベーションで対抗するアメリカ、板挟みに近い日本といった様に各国の色が出ていますね。

また、アメリカの言うデジタルテクノロジーによって、「限界費用ゼロ化」がもし実現させることができれば、「環境」と「経済成長」は両立する世界が訪れる可能性があります。
「限界費用ゼロ化」とは、一個作れば追加コストはゼロでいくらでもコピーできるという意味で、
社会や産業のソフトウェア化によってコピーにかかわる費用がゼロに近づくと、コンピュータやデータセンターの電力コストの削減努力につながる可能性があります。
つまり、再生可能エネルギーの導入が必然的に求められる可能性があります。

・所有から共有
 CDではなくてSpotify
・自然への共感
・電力コスト削減
 再生エネルギー
・Share
 コピー、デジタル

環境と資本主義の問題を乗り越える 限界費用ゼロ化

身近なところの「所有から共有」、「Share」では以下の様なサービスが多数存在し始めましたね。
「環境にやさしいサービス」、ご利用になってみませんか?

私視点の見どころ&感想

世界で起こっている貧困、環境、教育等の問題を「身近なもの」、「じぶんごと」として捉えることができたと思います。

遠い世界で起こっていることをそのままスルーせず日本に重ねてみると、やはり日本においても「相対的貧困」があったり、所得・地域格差による「教育の不平等さ」があったり、個人レベルで「EV車や電力会社の見直し」を行わなかったりと、考えれば考えるほど、改善する術は自ずと見つかってきます。

解決手段としては、デジタル・テクノロジー、太陽光パネル、再生可能エネルギー等を、国・企業だけに任せず、我々も「身近なところ」で利用・活用する必要があると思います。
そして、ヨーロッパとアメリカとは異なる日本独自のポジショニングを模索していく必要がありますね。

今回ご紹介させて頂いた内容はほんの一部のため、ご興味持たれた方は、是非本書をお手にとってみてください。
日本、世界、地球が未来の子供達にとって良いものになりますように。

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