新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、航空業界は大打撃を被っています。
日本を代表するANA、JALは2020年3月期決算では大幅減益、未だに運休・減便が拡大、国際線に至っては9割の便が対象となっています。
日本のみならず、グローバルエアラインにおいても同様の事態が起こっており、国家を巻き込んだ対応が必要になってきています。
今回、ANAホールディングスの2020年3月期決算内容とアナリスト/エコノミストの見解を収集し、現状と動向を纏めています。
この難局を乗り越えるべく解決策の立案に、少しでもご活用頂ければ幸いです。
ANAホールディングスの状況と動向
2020年3月期の連結業績(決算短信抜粋引用)
売上高は1兆9742億円(前期比4.1%減)、営業利益は同63.2%減の608億円に落ち込んだ。
エアラインビジネスは、人件費や機材関連費など固定費の営業費用に占める比率が約6割と高いため、第四四半期の新型コロナウィルス感染拡大の影響により、航空需要が大幅に減退した。
営業活動による「キャッシュアウト」が大きなインパクトを占めています。
「現金及び現金同等物期末残高」に於いては、財務活動でプラスに転じてはいるものの、135,937百万円(前期比75,901百万円減)となっています。
現金はありますが、2020年度の新型コロナウィルス感染拡大の影響を鑑み、配当金は0円となっています。
2020年3月期各セグメントの業績(決算短信抜粋引用)
◎航空事業
米中貿易摩擦をはじめとする世界経済の冷え込み等により、国際線貨物の需要が低迷したものの、堅調な国内線旅客需要や国際線ネットワークの拡大等により、第3四半期までの業績は堅調に推移しました。第4四半期は新型コロナウイルスの感染拡大による、世界各国の入国制限措置や国内の外出自粛等の影響で国内外の移動需要が急激に減退し、当期の航空事業の売上高は1兆7,377億円(前期比4.2%減)となりました。航空需要減退に対して、国際線・国内線ともに運休・減便を実施し、燃油費・空港使用料等を抑制したものの、安全・品質サービスの更なる向上や首都圏空港の発着枠拡大に備えて、機材費・整備費等が増加したことから、営業利益は495億円(同69.1%減)となりました。
<国際線旅客(ANAブランド)>
国際線旅客数は941万人(前期比6.7%減)となり、収入は6,139億円(同5.8%減)となりました。
<国内線旅客>
国内線旅客数は4,291万人(前期比3.2%減)となり、収入は6,799億円(同2.4%減)となりました。
<貨物(ANAブランド)>
国際線貨物輸送重量は866千トン(前期比5.2%減)となり、収入は1,026億円(同17.9%減)となりました。
<LCC>
旅客数は728万人(前期比10.6%減)となり、収入は819億円(同12.5%減)となりました。
<その他>
収入は2,257億円(前期比6.6%増)となりました。
なお、航空事業におけるその他には、マイレージ附帯収入、機内販売収入、整備受託収入等が含まれています
◎航空関連事業
関西空港、中部空港における旅客の搭乗受付や手荷物搭載等の空港地上支援業務の受託が増加したことや、沖縄にて本格的な事業展開を開始した航空機整備のMRO Japan㈱が、当期より新たに連結子会社として加わったこと等により、売上高は2,994億円(前期比2.9%増)となり、営業利益は181億円(同37.7%増)となりました。
◎旅行事業
国内旅行において、店頭販売を中心とする「ANAスカイホリデー」の取扱高が通期で減少したものの、国内旅行、海外旅行ともにインターネット販売商品の集客が好調だった他、ゴールデンウィーク10連休の需要を取り込んだこと等により、第3四半期までは堅調に推移しましたが、1月末より新型コロナウイルス感染拡大に伴うキャンセルの増加や新規予約減少の影響を受けたことで、売上高は前期を下回りました。
一方、システム費用が減少したこと等により、営業利益は前期を上回りました。
以上の結果、当期の旅行事業における売上高は1,439億円(前期比4.5%減)、営業利益は13億円(同129.9%増)となりました。
◎商社事業
航空・電子部門において、航空機部品等の取扱高が増加したものの、食品部門でナッツ類等の取扱高が減少した他、リテール部門で、特に第4四半期において、新型コロナウイルスの影響で空港利用者が大幅に減少し、空港免税店「ANA DUTY FREE SHOP」や空港物販店「ANA FESTA」の取扱高が減少したこと等により、売上高は前期を下回りました。
以上の結果、当期の商社事業における売上高は1,447億円(前期比3.9%減)、営業利益は29億円(同21.5%減)となりました。
DXグランプリ受賞、第8回企業価値向上表彰における優秀賞受賞
ANAは、経済産業省と東京証券取引所から、戦略的なIT活用に取り組む企業として、「攻めのIT経営銘柄」に2年連続で選定されました。
さらに、「攻めのIT経営銘柄」選定企業の中から、最も「デジタル時代を先導する企業」として、当期より新設された「DXグランプリ」にも選定された他、東京証券取引所が主催する「第8回企業価値向上表彰」において、投資家視点の経営を実践している企業として優秀賞を受賞しました。
2021年3月期の見通し
2020年3月期の業績はコロナウィルス感染
拡大の影響で大打撃だったけど、2021年
3月期はどうなんだろう?
合理的に算定は難しく、
業績予想は未定みたいだわ。
国内における外出自粛や海外への渡航制限、外国人の入国制限等の感染拡大防止策の継続が直接的に当社に与える影響を踏まえると、新型コロナウイルス感染症の終息時期が不明な現時点では、業績見通しを合理的に算定することが困難なことから、2021年3月期の連結業績予想については未定となっています。(2020年3月期の連結業績(決算短信抜粋引用)
IATA(国際航空運送協会)の予測では、2020年の航空業界について、旅客収入が2019年の45%程度になると見込んでいる。IATAの予測通りに旅客収入が55%減少するならば、仮に貨物事業などの売上高が横ばいに推移しても、売上高は1兆円弱に減少する。営業費用1兆6881億円のうち、固定費は6割として単純計算すると、航空事業は変動費を差し引かずとも赤字になる可能性がある。
(引用:ANA「かろうじて営業黒字」後に待ち受ける多難)
現金及び現金同等物期末残高が減少傾向
だったけど、手元資金は大丈夫なのかな?
日本政策投資銀行から3500億円の危機対応融資を
申請中というニュースを見たわ。
現預金と有価証券を合わせた手元資金を2386億円保有している。金融機関からの借り入れなどの資金繰り対策がすべて実現すれば9500億円を確保できることになり、ANAはひとまず1兆2000億円近い資金を用意できることになる。
(引用:ANA「かろうじて営業黒字」後に待ち受ける多難)
強制的にテレワークが浸透し、ビジネス
出張はどうなってしまうのだろう?
国際線を中心にリモート会議に移行するなど、
ANAとしても動向予測をしているみたいだわ。
「伝統的な(ビジネスの)慣行が、テレワークなどにより大きく変わりつつある。国際線を中心に(出張がリモート会議に変わるなど)動向が変わることを見込み、国際線拡大(の見通し)はマイルドにすることも考えなくてはいけない」(福澤常務)という。
実際、同社の片野坂真哉社長は2016年の東洋経済のインタビューで「今の世の中はインターネットが出てきて、本当に変化が激しくなった。一番怖いのはインターネットで便利になり、人が移動しなくなることだ。旅行をしなくても、スマートフォンでアフリカの映像を見ることができる」と話している。
(引用:ANA「かろうじて営業黒字」後に待ち受ける多難)
まとめ
日本を代表するANAホールディングスですが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響は甚大であり、2021年3月期は見通せない状況となっています。
強制的にテレワークに移行、つまりリモート会議が浸透する中、国際線を中心にビジネス出張控えが起こることが予想されています。
今後、「Go To Travel キャンペーン」などの復興支援が予定されていますが、回復に向けて羽ばたいて頂きたいと考えます。