2020年、新型コロナウィルス感染が拡大し、企業によっては中国への渡航禁止や不要不急の出張の回避、在宅勤務の推奨等がなされていますね。
海運会社においては、武漢発着の海上禁止やクルーズ船の運休が相次いでおり、他国であっても大打撃が予想されます。
そんな海運会社のリスクとは何?
海運会社は耐えられるの?
海運会社の事業リスクとは?
海運会社の仕事とは、「船で物資を運ぶ仕事」のことを指し、日本の物流において9割以上を占める重要な役目を担っています。
その中でも、日本郵船、商船三井、川崎汽船の大手三社を「三大海運会社」と呼ぶことが多いとされています。
今回、「日本郵船」の「リスク情報」を一部参考に、事業リスクを纏めています。
パンデミックリスクに該当するものに限定するのであれば、「海運市況・荷動き等の変動によるリスク」、「グローバルな事業展開による影響について」をご覧頂ければと思います。
重大な事故等によるリスク
不測の事故、特に油濁その他の環境汚染、乗務員又は乗客の死傷、船舶の喪失又は損傷等につながる重大な事故等が発生した場合、もしくは海賊・テロ事案等保安事件が発生した場合には、貨物輸送の遅延・不能、運送契約の解除、債務不履行、過料、訴訟、罰金、営業制限、保険料の引き上げ、評判及び顧客関係の悪化といった事態に直面する可能性があり、かかるリスクを保険で適切にカバーできない場合には、業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
海運市況・荷動き等の変動によるリスク
世界の経済動向、国際間の荷動き、競争激化、船腹需給バランス等の影響により、運賃収入及び傭船料収入などが大きく変動する可能性があり、その結果として業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
特に、海上運賃は、船腹需給の不均衡により大幅に変動する傾向にあります。
一方、船腹の供給が需要を上回ると、市場における傭船料の水準が下落する可能性があります。
なお、船腹の需要に影響を及ぼす可能性のある要因には、以下のものがあります。
- 世界的、地域的な政治動向及び経済状況
- 運搬するエネルギー資源、原材料及び商品の需要及び在庫水準
- 工場のグローバル化
- 海上輸送及びその他の輸送方法の変化並びに代替輸送手段の発展
- 環境及びその他の規制の動向
一方、船腹の供給に影響を及ぼす可能性のある要因には、以下のものがあります。 - 新造船の竣工により増加する船腹量
- 老齢船の解撤により減少する船腹量
- 港及び運河の混雑又は閉鎖
- 環境規制及び船舶の耐用年数を制限する可能性のあるその他の規制の変更又は基準を充たす船舶の増減
為替レートの変動による影響について
外貨建て取引の収入が多く、為替レートの変動が損益に影響を与える可能性があります。
収入と費用の通貨を一致させる施策を進めるとともに、為替予約や通貨スワップ等のヘッジ取引により、為替レート変動の影響の軽減に努めています。
燃料油価格の変動による影響について
世界中で運航する船舶及び航空機に使用される燃料油を常時購入しています。
燃料油費用は、当社グループの定期船事業、不定期専用船事業及び航空運送事業における費用の大きな割合を占めています。
燃料油の価格水準及び入手可能量は、世界的な原油需給、外国為替市場の変動、産油国やOPECの動向、環境規制の状況、戦争その他の多くの要因により変動し、これらの動向を正確に予測することは困難です。
燃料油調達地域の分散及びデリバティブ取引を利用した燃料油の価格ヘッジ、燃料油の消費量節減等の対策を講じて業績に与える影響の軽減に努めていますが、かかる対策は限定的であり、価格の変動又は供給不足から十分に影響を軽減できない可能性があります。
グローバルな事業展開による影響について
世界各地の地域における経済状況等により影響を受ける可能性があります。
具体的には、以下に掲げるいくつかのリスクが内在しています。
- 政治的又は経済的要因
- 事業・投資許可、租税、為替管制、国際資産の没収、独占禁止、通商制限など公的規制の影響
- 他社と合弁・提携する事業の動向により生じる影響
- 戦争、暴動、テロ、海賊、伝染病、ストライキ、コンピューターウイルス、その他の要因による社会的混乱
- 地震、津波、台風等の自然災害の影響
- 各国規制・制裁などの把握不全
リスク顕在化後の対応は?
2020年3月現在も猛威を振るっている「新型コロナウイルス」を例に考えてみましょう。
上述の「海運会社の事業リスクとは?」の中では、「海運市況・荷動き等の変動によるリスク」、「グローバルな事業展開による影響について」がパンデミックリスクに関わるところです。
2020年2月25日の日本郵便のニュースリリースによれば、 以下の通り、3月から4月のクルーズを中止、旅行代金は全額返金となっています。
Date:2020/2/25
新型コロナウイルス関連肺炎の発生に関する対応について、感染症専門機関及び関連機関より情報を収集しておりましたが、今般、国内における感染の拡大の状況などを踏まえ、公衆衛生上の観点から、お客様の安心安全を最優先に検討した結果、以下のクルーズを中止することを決定いたしました。
お支払い済の旅行代金は、後日お申込みの旅行会社よりご返金します。<2020年3月出発>
3月11日出発 アスカクラブクルーズNext
3月19日出発 春の休日 駿河クルーズ
3月22日出発 春うらら 横浜・神戸クルーズ
3月24日出発 神戸発着 陽春の宮崎・日向クルーズ
3月26日出発 神戸発 駿河・横浜スプリングクルーズ
3月28日出発 春の週末 横浜ワンナイトクルーズ
3月29日出発 春爛漫 四日市クルーズ
※この他にすべてのチャータークルーズも中止となります。<2020年4月出発>
【重要なお知らせ】
4月2日出発(横浜発)/4月3日出発(神戸発) 2020年世界一周クルーズ
今後のクルーズにつきましては、安心してご乗船いただける状況が整い次第、再開のご案内をさせていただきます。
また、2020年世界一周クルーズ終了後に予定しております2020年7月以降出発のクルーズにつきましては、現在のところスケジュール通りの運航を予定しております。
2020年3月及び4月出発のクルーズ中止のお知らせ 2020年2月25日郵船クルーズ株式会社
上記、感染拡大を最小限にとどめる英断となりますが、1日も早くウィルスが撲滅することを待つしかないのも現状です。
倒産しないの?
クルーズの運休や減便が続くということは、売上は大打撃、原価は「機材費」に加え、乗務員/スタッフ等の「人件費」だけは出ていくことになってしまいます。
そのため、長引けば長引くほど、経営へのダメージは大きくなってしまうことは航空業界とも同一であり、売上が仮にゼロだった場合、経営を維持するためには、預貯金を切り崩すか、追加の借入れを行う必要があります。
そのため、新型コロナウイルスの流行が長期化してしまうと、資金繰りに行き詰まって倒産する海運会社が出てきてもおかしくはない状況ではあります。
倒産しないためにも、常にリスクに備え、キャッシュフローを意識し、改善していく業界と捉えても良いでしょう。
わたしたちにできることは?
パンデミックを拡大させないためには、Aさんから小集団へ、小集団からさらに大集団へと波及することを国を跨ぎ止めること、つまり、医療機関のキャパシティを超えた感染被害を回避し、早期ウィルス撲滅に寄与することです。
われわれが日常で実施できることは、
・不要不急の外出を控える
・飛行機、電車、タクシー、バスを極力控える
・マスクをつける
・手洗い、うがいを忘れず行う
・アルコール消毒をする
・罹患した可能性があれば、まずは病院に行かず電話相談
一人一人の行動が早期解消に繋がり、感染者がいなくなれば、われわれの旅行やビジネスに欠かせない海運会社の運航が安定的になされるでしょう。
まとめ
海運会社は、景気、原油、感染症などの外的要因に非常に左右される業界です。
国の経済にも影響を与えると共に自社の倒産危機に直面することがありますが、われわれ一人一人の行動で影響を最小限に抑えることができます。
不要不急の外出の取りやめやマスクの着用、手洗い・うがいを徹底していきましょう。